中2の夏、我が家は小さな建売住宅を2軒購入した。1軒で家族5人では狭すぎる物件だった為、壁を抜き２軒を一体構造に改築してから入居することにした。懐具合も厳しかったのだろう、工事は先送りとなり、1年ほど私一人で暮らすことになった。ちょうど初めて夢中になれる事を見つけ、親の目の届かない環境で、寝る間も惜しんでギターを弾くようになった。たくろうの”元気です”が私のバイエル。中2の秋、フォークギターを購入。音楽と縁遠かった少年は、ついに自我に目覚めるのである。
少しずつギターが弾けるようになると、仲間に聞かせたくなる。一人暮らしも相まって、我家は溜まり場と化した。友達は増え、積極性も増し、自信は大きく私を成長させた。成績も上がり、テニスも上達、少しばかり人気者にもなっていた。「パックインミュージック」「セイヤング」深夜放送漬、聞く曲全てが新鮮。「明星」の付録歌本のコード譜は、小学校のドリルを解くかのように制覇した。指先にはタコができ、夜中に大声出して、隣家の長谷川さんから苦情が来たこともあった。兎にも角にもギター三昧の青春の幕開けである。
中1の苦く、そして衝撃の音楽祭から1年後。私のクラスはギター伴奏を選曲。初めてステージで演奏した。以来、ちっぽけだが40回程場数を踏むことになる。引っ込み思案だった少年は、ポジティブな青年へと変貌を遂げて行ったのである。
きっかけなどほんの些細な事だが、無我夢中の源には、違う運命への布石が秘められていたのだ。・・・・・・・・(Vol.3へ続く)

—-Life With Music—-バンドリーダー印南(https://www.innami-factory.co.jp/ )