入社したての頃、先輩達から頻繁に飲み屋に誘われた。
おそらく会社の跡取りとして、味方に付けたかったのだろう。
私の方も仕事の付き合いと割り切り、極力断らなかった。
安月給ではあったがご馳走にはならず、自分の飲食分だけは必ず払った。

当時の行きつけは地元の「福ちゃん」。いわゆる居酒屋で、会社帰りの溜まり場。
店のメニューは豊富なのだが、決まって「日本酒の冷」と「鯨ベーコン」を注文した。
一番安い組み合わせだった。

1977年の商業捕鯨中止直前までは、学校給食でも鯨肉は定番だった。
「最も安価な肉」の地位で、私の小中学時代は「竜田揚げ」等で頻繁に登場していた。
美味かった記憶はないのだが、お馴染みではあった。

1979年に北洋捕鯨も中止になり、鯨肉を見かけなくなってはいたが、「福ちゃん」の「鯨ベーコン」は確か200円程度で、「日本酒の冷」には打ってつけだった。

1987年に近海の大型捕鯨が終了。
「幻の肉」となって久しく、現在では「高級食材」として取扱われている。

ごく稀にだが、「鯨ベーコン」が食卓を彩る。
魚屋から良い出物の時は、回してもらう手筈を取っているようだ。

有難い。嬉しい。泣ける。そして、美味しい。

さぁ、かみさんにどんなご機嫌取りをして、好物に有りつくか？
デートにでも誘ってみるか！････････(Vol.19へ続く)

———-Life With Music———-オニオンスライスと辛子醤油でどうぞ!!
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